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西洋の世界:堅尼地城(Kennedy Town)

LUXE City Guides
  • Written by LUXE City Guides, Images by Harold de Puymorin

堅尼地城(Kennedy Town)は常に異端な存在でした。香港の第7代総督Arthur Edward Kennedyから名付けられたこの街は、旧英国植民地の香港でも特に古い地域の1つです。もともと、1850年半ばには大平の乱を逃れた華南人の移住地に指定されましたが、1903年に西寧街(Sai Ning Street)に境界石が置かれ、市の西側の境界が画されました。しかし、堅尼地城の開発は他の地域と比べるとペースが緩やかで、有機的な街が作られてきました。龍虎山(Lung Fu Shan)と摩星嶺(Mount Davis)の丘陵地によって南側への開発が制約を受けた結果、街の密度は現在まで快適さを保っています。

グループ・フィットネスのインストラクターをしているAnna Ngさんは、堅尼地城の昔からの住人で、トラムが内陸側ではなく、ビクトリアハーバー(Victoria Harbour)の隣、移転してきた堅尼地城遊泳池(Kennedy Town Swimming Pool)のそばを走っていたころを覚えています。「台風が来ると子どもたちは、ビクトリアハーバーと軌道の間の壁を波が超えて来るのを、ドキドキしながら見ていました」とNg さんは振り返ります。「当時、わたしの住む地区で東西をつなぐ幹線道路は、卑路乍街(Belcher's Street)しかありませんでした。交通渋滞が多くて、しょっちゅう学校に遅刻しました。」

Ng さんにとって、他の場所に住むことは考えられません。「ここには幸せな思い出がたくさんあります」とNgさんは話します。「夏になると、週末は必ず堅尼地城遊泳池に泳ぎに行きました。当時は食肉処理場のすぐ隣だったので、牛の匂いがしたことを今も覚えています。丘を少し上ったところにある緑地の羲皇台(Hee Wong Terrace)を歩くのも好きです。今ではJaspa’sのようなレストランがたくさんありますが、揚げたシシトウの肉詰めを売っていた古い屋台や、大きな袋に入れた米を家まで配達してくれた小さなお店を、懐かしく思います。うれしいのは、今も 嚐囍(Sheung Hei) が残っていることです。このレストランの土鍋で炊いたご飯ものが、わたしの大好物です。ここは、今でも炭火を使っている数少ない店の1つです。」

卑路乍湾公園(Belcher Bay Park)

開発が緩やかな堅尼地城は、基本的に住宅地です。低層建築と中層建物が混在しているため、様々な住民が集まっています。オープンスペースも多く、卑路乍湾公園(Belcher Bay Park)や、堅弥地城新海旁街(New Kennedy Town Praya)では、木々の間や海辺を散歩することができます。MTR港島線(Island Line)の伸延により、隠れた名所を探しに来る、日帰り旅行者も増えています。ジャーナリストのReggie Hoさんは5年前、高齢の母親の介護のために、堅尼地城に移ってきました。それ以来、この街が Ho さんの第二の故郷になりました。港島線の伸延によって、生活が変わったと感じています。「以前は交通渋滞のため、中環(Central)までバスで行くのに45分ほどかかりました」と Ho さんは振り返ります。「MTRができて、今は簡単に行けるようになりました。」

魯班先師廟(Lo Pan Temple)

Hoさんは、新旧が入り交じった堅尼地城を気に入っています。「私は犬を連れて青蓮台(Ching Lin Terrace)に行くのが好きです。 魯班先師廟(Lo Pan Temple) の前に座っていると、心が穏やかになるからです」と静かに語ります。「角のところにある小さなテイクアウトの店も好きです。茶葉蛋(煮卵)4個が10香港ドルです。爹核士街(Davis Street)のバーの道に面した席で一杯飲むのも好きです。雲南料理の 阿一(A one) の鶏絲麺(鶏肉細切り中華そば)も好きです。いつも、かぶと青菜の付け合せを注文して、辛いつゆに浸して食べます。」

 

MTRができたことで、堅尼地城では倉庫街の一部が、現代的なオフィススペースに生まれ変わりつつあります。The Loopの発行人で、中国系カナダ人移住者のAdele Wongさんは、この地区の住宅地としての質を高く評価しています。「住宅地としての利便性と快適性のバランスが最適です」というのが、Wong さんの感想です。「会社を立ち上げたとき、場所は自宅の近くにして、歩いて通勤できるようにしました。今では、わたしが働いているThe Hive Kennedy Townのようなクールなコワーキングスペースが、産業用ビルの中にたくさん隠れています。建物を見ただけでは、中でそれほどたくさんの仕事が行われているとは、分からないでしょう。」

 

香港に最近住み始めた Anton Kilaykoさんは、5つ星ホテルでコミュニケーションディレクターを務めています。Kilayko さんは堅尼地城が仕事の息抜きに最適な場所で、しかも思い立ったら数分で着く場所にあることに気付きました。「街に並ぶ店の風景は、どこか村の生活を思わせるところがあります」とKilaykoさんは言います。「ペットにもとても優しい街です。シンガポールに残してきた犬が恋しくなりますが、いつも機会を見つけて、近所の家で飼っている人懐っこい犬と遊ばせてもらっています。」タコスの Chino やコーヒーの The Cofftea Shop のような飲食店がそろう堅尼地城は、グルメの街だとKilaykoは感じています。

 

現代的でありながら伝統も残る堅尼地城は、香港を故郷にしたい人には、それにふさわしい街になる、またこの地区の楽しみを味わうために訪れた人は、アーバンライフのひとときを過ごせる、そんな場所です。


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