香港迷のおすすめ

超級香港迷インタビュー
イラストレーター・小野寺光子さん

見てびっくり、食べて満足!
ひと味ちがう香港グルメ体験

生鮮市場へ生魚を見に行き、ジューシーな仔豚の丸焼きに挑戦し、乾物屋で干しエビを買い……屋台やレストランの定番料理とはひと味ちがう、おいしくてユニークな香港グルメに挑戦してみませんか?

香港の街や人々の何気ない瞬間をとらえ、カラフルな水彩画で表現している小野寺光子さん。イラストレーターならではの目線でとらえた「絵になる香港」についてお聞きしたところ……さすがは超級香港迷、出てきたのはありきたりな風景やインスタ映えスポットではありませんでした。小野寺さんがおすすめするのは日本では見られない不思議な魚や、一度は体験したい仔豚の丸焼き、料理上手になれる干しエビなど、絵になるだけでなく他では得難い香港の食体験。見てびっくり、食べて満足な香港グルメを、どうぞご堪能ください。

香港ならではの食体験、「九肚魚」&「烤乳猪」

――小野寺さんが香港にハマったきっかけを教えてください。

そもそもはレスリー・チャンが好きで香港に興味をもちました。でも、初めて香港に行ってみたらそこで感じた海の色、空の雲の勢い、風景、人の感じなど、何もかもがすごく性に合って、一気に好きになってしまいました。香港の人たちって、困っていると助けてくれたり、親切なところがあります。よく、強い調子で「ああ?」って聞き返されるんだけど、あれは別に怒っているわけではないですよ(笑)。

――香港は「人」も大きな魅力のひとつなんですね。小野寺さんが香港の絵を描くときは、どのように描いているんですか?

街を歩いていて「いいな」と思った風景をカメラにおさめておき、見た時の感動を思い出しながら描くことが多いです。じゃあ写真があればいいのかというとそうでもなくて、実際に自分の目で見た感動がないと、空々しい説明的な絵になっちゃうんですよね。「あの時のおじさんの、ラッキョウを逆さにしたみたいなツルツルの頭と、すこし歯が出ている感じがよかったな」とか、自分の記憶が大事なんです。

――街歩きしながらも、そこで生活する人々をしっかり見ていらっしゃるんですね。

人は歳を重ねるほど、これまでの人生や人柄がにじみ出てきて、見た目にもより個性が表れてくると思うのですが、香港ではとくにそれを感じます。たとえば、キリッとした表情なのに優しいなで肩だったり、ヨレたランニングを着た細い首のおじちゃんが、妙に男気溢れてダンディだったり……そんなギャップが好きです。
イラストを描くときは、その時々で『香港っぽい!』と感じた印象をできるだけ再現したいと思っています。見てくださった方にそのあたりを共感していただけると、とても嬉しくなりますね。

――そんなするどい観察眼をお持ちの小野寺さんにお聞きしたいのが、イラストレーター目線で見た香港の楽しみ方なのですが。

はい。わたしは食べることが好きなので、個人的に「これぞ、香港ならでは!」だと思っている食べものについてご紹介できたらと思います。
「九肚魚」(カウトウユ)という魚をご存知でしょうか。英語名は「ボンベイ・ダック」、日本語では「テナガミズテング」といいます。シシャモより少し大きいくらいの、繊細でぬめらかな魚体なのですが、よーく見ると顔が怖い! クワッと開いた口に細い牙が並んでいて、まるでエイリアンのような……(笑)。でもどこかひょうきんさもあってかわいらしい。私はいつも街市(ガイシー ※香港の生鮮食品市場)に行っては、そのニュルッとした姿を確認せずにはいられません。

――街市に行けば、見ることができるんですか?

はい。街市って、身近に楽しめる水族館だとも思うんです。見に行ってみると、面白いですよ。九肚魚は南アジアで多く獲れるようで、大抵の街市で見ることができる大衆魚です。身が極端に柔らかくて非常に傷みやすいので、遠くまで運べない魚と言われています。そういうわけで、皆様にも香港でその生の姿を見ていただきたいし、ぜひとも食していただきたいです!

――どこで食べられるのでしょうか?

広東系、潮州系のレストランで食べられます。「椒鹽九肚魚」(九肚魚のスパイシーソルト揚げ)または「酥炸九肚魚」(九肚魚のフリット)というメニューがあったら注文してみてください。サクサクっと揚がった衣の中から、とろけるような身が出てきます。これが、他では味わえないクリーミーさなんです! 値段も高くなく、ビールにも合いますよ。

もうひとつ体験していただきたいのが、いわゆる仔豚の丸焼き「烤乳猪」(カオルージュー)。仔豚を開きにして皮がパリッパリになるように焼いた広東料理の名物で、肉の部分はジューシー。結婚式などのお祝い事では丸一匹の状態で出てくることがあり、最高に絵になるのですが、さすがに少人数では食べられませんね(笑)。

これを少量でも頼める嬉しいレストランが「新斗記」です。ここは庶民的だけれどちゃんとした広東料理を出してくれる店。烤乳猪も軽やかで脂のしつこさもなく、もたれません。1/4サイズをオーダーすれば、3~4人でペロリと食べられますよ。豚肉の麗しい照りをしっかり写真に収めて、思い出のよすがにどうぞ!

普段の料理がおいしくなる、魔法の食材!?

――小野寺さんが香港で必ず買う食材はありますか?

香港の干しエビ「蝦乾(蝦干)」はよく買います。料理にも使いやすいですし、日本では売っていないのでかなりおすすめですよ! 日本でよく見る硬めで小さい干しエビは、香港では「蝦米」と言われる別物です。これに比べると香港の「蝦乾(蝦干)」は弾力があって大きく、平たいんです。

どちらかというとダシというよりはおかずの材料として重宝します。お水で戻すのも10分少々と、調理に時間もかかりません。野菜の蒸しものや炒めものなどに加えて調理するだけで、十分柔らかくなります。エビの旨味も濃く、いつもの料理が格段においしく、凝った味になるんですよ。たまに家にいらしたお客さんに出したりすると「やだ~、料理上手!」なんて言われることもあるんですけど、本当はこの干しエビを使っているだけなんです(笑)。

――どこで買えるのでしょうか?

香港島上環(ションワン)の海味街と呼ばれている徳輔道西(Des Voeux Road. West)や、街市などの乾物屋で手に入ります。1斤と書いてあったら、だいたい600グラム。これだとかなり多めなので半斤で十分だと思います。指を差して「ハーフで!」と注文すればOKです。
直接交渉はハードルが高いかもという場合は、「樓上(ラウション)」というチェーンの食品店がおすすめです。パッケージに小分けされていて、値段も明記してあるので安心です。

――香港は乾物が安くて種類も多いのが嬉しいですよね。

一般的な乾物は安いですね。エビは大中小といろんな大きさがあるし、干し貝柱や小さいドンコなど、日本から輸入している乾物も質がよくて安いので、わたしもたんまり買って帰ります。
たしか、世界で最も日本の食材を輸入をしているのが香港だと言われていますよね。国でなく、あの都市だけで世界一。世界各地のいいものを大量にコンテナ買いしているからこそ値段もそこまで上がらず、日本のものが日本で買うより安いぐらいのときもあるんですよね。

――乾麺もお土産として人気ですが、小野寺さんおすすめの麺は何ですか?

スーパーで売っているような大量生産品の麺なら、「寿桃」のものがおいしいです。パッケージに図や英語も書いてあるから、ゆで方もなんとなくわかるのがいいですね。
個人商店で買うなら「安利製麺」がおすすめ。上環にあるお店で、品質のいいものがそろっています。ほうれん草やあわびが練り込んである麺もありますよ。個包装されているので、ばらまき土産にしても便利。お店の人たちも日本人観光客慣れしていて、初めての方でも行きやすいと思います。
それから、麺を買って帰るならばチキンパウダー(スープの素)もぜひ一緒に。「Knorr(クノール)」のチキンパウダーなどがスーパーで売っています。これを使うだけで、家で作る麺が香港味になりますよ!

――他にも、スーパーで注目しておくといいものはありますか?

スーパーには安いものだけを狙って行くのもいいけれど、注目するとおもしろいかなと思うのはオーガニック食材です。日本だと、中華でオーガニックの食材って、ほとんど見かけないですよね。でも、いま香港には食への意識が高い人たちが増えていて、「City Super(シティスーパー)」をはじめオーガニックなものを扱う店も多く、駅構内にまでオーガニック食品店があったりします。一般の商品よりは少し高めですけれど、日本では手に入りにくいのでおすすめです。
パッケージにだいたい「有機」「ORGANIC」「GREEN○○」「農○○」などと書いてあるのでわかると思います。生野菜などでは「本当にオーガニックなの?」と思うようなものもあるのですが、わたしは主に乾物を中心にいろいろ試してみています(笑)。

――ありがとうございます。今日はあらためて、香港の食のおもしろさを教えていただきました。

本場の中国料理は、食べて病気を防ぎ健康を保つ「薬食同源」を基本としています。外食でも淡白かつ軽めで、季節の食材を生かした滋味豊かな料理が多いです。香港人の知り合いも「中国料理ではすべての料理にとろみをつけたりはしないよ。たしかに油を使う料理は多いけれど、とろみをつけなければ自然と皿に油が落ちるから、さっぱりしてヘルシーに食べられるんだよ」と言っていました。
こんなふうに日本人がイメージする中華との違いもまた、香港で体験できる食のおもしろさかもしれません。香港の食は奥が深くて研究のしがいがありますね。今後は香港のおばあちゃんたちが作るような家庭の味も追求してみたいなと思っています。

小野寺光子

イラストレーター。旅先で見た街並や暮らしをユーモラスで繊細なタッチで描く。『香港路地的裏グルメ』(世界文化社)、『香港トラムでぶらり女子旅』(ダイヤモンドビッグ社)など旅関連本の挿画や出版も多数。頻繁に香港と日本を行き来し、イラスト展なども開催している。

Twitter:https://twitter.com/kadoorie_ave
Instagrm:https://www.instagram.com/kadoorie_ave
Web:http://kadoorie-ave.tumblr.com/

掲載情報は、2019年4月時点の内容です。